自治医科大学演劇部
読売新聞にて卒業公演が紹介されました
卒業公演『ブルーシート』と自治医大卒業生の菅野武先生が読売新聞にて紹介されています。
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先日、演劇部にて読売新聞の取材を受けたものが記事になりました。
私達が話した内容を記者の方がよく汲み取ってくださり、素敵な記事に仕上がっております。
ぜひご一読ください!
https://www.yomiuri.co.jp/local/tochigi/news/20230920-OYTNT50170/
〔以下記事全文〕
自治医大演劇部 28日から卒業公演 演技に葛藤も震災被災者の心表現
自治医科大学(下野市薬師寺)演劇部は28日から同大で、4年ぶりの卒業公演として、東日本大震災後を生きる高校生を描いた作品「ブルーシート」を上演する。被災経験のない部員が大半で、「自分たちが演じていいのか」と葛藤した時期もあったが、当事者の話を聞くなどして乗り越え、熱のこもった稽古を続けている。
(八幡大輝)
「ブルーシート」は、演出家の飴屋 法水のりみず さんが、福島県立いわき総合高校の生徒とともに作り上げた作品で、2013年1月に同校で上演。14年に「演劇界の芥川賞」と称される岸田國士戯曲賞を受賞した。10人の高校生が登場する会話劇で、個々の被災経験や内に秘める思いが、等身大の会話を通して浮かび上がる。震災の直接的な描写は少ないが、ブルーシートが「仮設住宅の大きさ」や「包まれた遺体」などを表す小道具となっている。
コロナ禍の中断を挟んで4年ぶりの卒業公演にこの作品を提案したのは、部内で公演の責任者を務める 堀田弥希ほりたみき さん(6年)。東北の被災地から離れた群馬県出身だが、全国から来た学友と話すうち、さらに遠方の地域では「テレビの中の世界」という認識の人もいることを感じたという。「伝えられる人が伝えないと風化してしまう」。そんな思いから、震災をテーマに演じようと考えた。
しかし、いざ練習を始めると、被災地の高校生をどう表現するか悩んだ。地元の青森県で被災した平こころさん(2年)も「電気がつかず、ずっと寝ていた生活は今も思い出すが、当時は小学1年生で、よく分かっていなかった」と振り返る。脚本にはストレートに思いを訴える場面は少ない。当時の高校生なら何を感じるのか、会話の背景にある心情の解釈に苦しんだ。
転機となったのは、同大の災害医療の授業だった。担当の菅野武さん(44)は同大の卒業生で、勤務先の宮城県南三陸町の病院で被災。医療機器も薬もない状況で、救助されるまで患者に寄り添った。当時の映像とともに「医療者として何ができるか」を伝える授業を受けた堀田さんは、菅野さんに相談し、8月末、部員との意見交換の場を設けた。
部員らは菅野さんの「当事者ほど話したがらない。もっと大変な人がいるから言わないでおこう、と抱え込んでしまう」という説明に、作中の震災をぼかす表現もこうした心理の表れではないかと気づいた。「自分たちが演じていいのか」という問いかけには「どんどんやって。被災者は哀れみを受ける存在ではない。考えること自体が尊いことだ」と背中を押された。
意見交換を経て「イメージが鮮明になった」という部員らは、「このセリフの時は、どこを向けばいいのか」「ここは笑顔で」などと話し合いながら稽古に臨んでいる。堀田さんは「高校生が被災経験を昇華させて、未来に進んでいく『希望の話』だと思えるようになった」と語る。菅野さんは「当たり前の日常の意味を考えるような作品。災害が入り口だが、『あなたはどう生きるか』を問う演劇になるのでは」と期待を寄せた。
公演は28、29日と来月1日、同大アトラスアリーナ1階の演劇部部室で。入場無料。定員は各回80人程度で事前予約が必要。問い合わせは同部(jichiidaidrama(at)gmail.com)。※(at)は@に置き換えてください。